三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2015年3月1日放送

妓楼が建ち並び、芝居小屋もあり、多くのお伊勢参りの参拝客で賑わった古市。
その古市で育まれた歌舞伎文化は一度廃れましたが、今また復活し、継承していきます!

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伊勢市の『古市(ふるいち)』は、その名の通り、古い町並みが今も残っています。
ここ古市は、お伊勢参りの旅人が繰り出した歓楽街でしたが、現在では、こちらの『麻吉旅館』が1軒残るのみとなっています。
今回は、ここ古市で栄えた「あるモノ」を今に残そうとがんばっているみなさんをご紹介します!


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それはなんと、『歌舞伎』!

「伊勢の古市で評判をとらなければ、京・大阪のひのき舞台は踏めない」
そう言われるほど、江戸時代の古市は歌舞伎、浄瑠璃、芝居が盛んで、参宮道には、『古市三座(ふるいち・さんざ)』と呼ばれる芝居小屋が並んでいたと言われています。
現在でも、大芝居を控えた役者さんたちがこの地を訪れる、まさに役者の登竜門的存在なのです。


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そんな古市の歴史を今に残すのが『伊勢古市歌舞伎保存会』のみなさん。
平成6年に伊勢市で開催された『まつり博・三重』をきっかけに再結成し、昭和38年から途絶えていた歌舞伎を復活させました。
現在のメンバーは15人。
毎年開催される定期公演のほか、各地のイベントで公演しています。
この日は、今月、3月29日に松阪市で開催される公演に向けて、古市公民館にて稽古を行っていました。


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「今演じているのは『伊勢音頭恋寝刀』という演目です。
ここ古市が舞台となったお芝居なんですよ」

と、保存会の成川元紀さん。

「公演のたびに花束や差し入れをいただきます。本当ですって(笑)」

と、同じく竹内央さん。
見得の切り方にも堂が入っています。


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こちらの女性、三宅陽子さんは地方(じかた)の三味線を担当。

「三味線は『古市歌舞伎保存会』に入ってから初めて習いました。
やはり台詞の後ろで三味線の音があると、とても良いですから」


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こちらは保管されているカツラ。
戦前からのものを入れると40ほどもあるそうです。
昔の人は小柄だったため、戦前のカツラ(下画像右)は現在のものと比べるととても小さく、頭が締め付けられ10分と被っていられないそうです。


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保存会でお化粧の指導と、床山を担当している久保田敏子さん。
お化粧は久保田さんの指導のもと、稽古同様一人ひとりが自分で覚え、公演本番では、演じる役者自身が自分で行います。


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できることは、すべて自分たちで。
お芝居で使う着物や小道具も、保存会のみなさんが作り、大切に保管をしているのです。


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練習中に目につくのが、子どもたちの姿。
なんと『伊勢古市歌舞伎保存会には』小学生、中学生、そして、高校生も参加しています。
『伊勢古市歌舞伎』の次の時代を担う、まさに、期待の星。
歌舞伎の所作、基本の動作を先輩たちから学んでいました。


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「歌舞伎をしたいと思ったきっかけは、テレビで見た歌舞伎をかっこいいと思ったから」

と、小学3年生の山本倫太郎くん。

「歌舞伎の魅力は言葉です。今の言葉とぜんぜん違うので、とても新鮮に感じます」

と、高校2年、歌舞伎歴3ヶ月の百合レイナさん。

「自分が住んでいる地域の伝統文化に触れたいと思ったのが、歌舞伎を始めたきっかけです。
長い台詞があると大変ですが、何度も台本を読んで、物語をちゃんと理解して覚えています」

と、中学3年で歌舞伎歴6年の久田萌夏さん。
来年からは高校生になりますが、時間を見つけて練習に通うつもりだとか。
心強いですね。


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『古市歌舞伎』の今後の活動について、メンバーにお聞きしました。

「今までも定期的に公演していますが、一度でも絶やすと億劫になってしまうと思います。
だから一番大切なのは、続けることを基本に考えることですね」

と、石原英明さん。

「子どもをもっと増やすことが第一の目標です。
保存会を立ち上げてずいぶん経ちますが、現有勢力だけでずっと続けてきたので、やはり、たくさんの人に方に知ってもらい、新しい若い子が増えてほしいですね」

と、中野眞家さん。


ふるさとを舞台にした古典芸能を演じる。
地域の歴史を、文化を、その所作のひとつひとつに込めて。

『伊勢古市歌舞伎保存会』のみなさんは、故郷・古市のひのき舞台に立ち続けます。

●伊勢古市歌舞伎保存会公演
開催日 平成27年3月29日(日)
会場 クラギ文化ホール(松阪市川井町690)
開場 13:00
開演 14:00
演目 『伊勢音頭恋寝刃』
料金 全席指定 2000円